待機児童の多い激戦区で認可保育所への保活(保育園に子どもを預けるための活動)を始める場合、入れなかったときに慌てないように、並行して認可外保育施設の情報収集や見学をしておく保護者もいます。その選択肢の1つとしても注目されているのが、英語で保育を行っているプリスクールです。プリスクールの情報収集をする前に、まずは認可外保育施設について知っておきましょう。
プリスクールの多くは認可外保育施設
日本におけるプリスクールとは、未就学児を対象として、英語で保育をする施設の総称です。厳密な定義はありませんが、その多くが法律上は認可外保育施設にあたります。認可保育所は、児童福祉法に基づく児童福祉施設で、施設の面積や保育士の数などに関して、国が定めた設置基準を満たしている施設です。例えば、下記のような基準があります。
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
第五章 保育所
(設備の基準)
第三十二条 保育所の設備の基準は、次のとおりとする。
五 満二歳以上の幼児を入所させる保育所には、保育室又は遊戯室、屋外遊戯場(保育所の付近にある屋外遊戯場に代わるべき場所を含む。次号において同じ。)、調理室及び便所を設けること。
六 保育室又は遊戯室の面積は、前号の幼児一人につき一・九八平方メートル以上、屋外遊戯場の面積は、前号の幼児一人につき三・三平方メートル以上であること。
このような基準を満たしていない施設は、認可外保育施設となります。
東京都が独自の基準を設定して作っているのが、認証保育所という制度です。区分としては認可外保育施設に入りますが、料金設定に上限額を設け、都独自の基準を設定して、適切な保育水準を確保しています。
認可保育所と認可外保育施設の違い
認可外保育施設と認可保育所は、区市町村との関係にも違いがあります。
認可保育所
- 保護者が仕事で世話をする人がいないなど、「保育の必要性」があると区市町村が認定した児童を保育する施設
- 区市町村の子ども子育て支援事業計画に基づき計画的に設置される施設
- 保護者が区市町村の窓口に申し込み、申込者が定員を上回る場合は、区市町村が選考、調整する
- 保育料は、区市町村が保護者の収入に応じて定めているため、その地域内のどの保育所に入所しても原則同じ金額になる
- 運営費等は国、都、区市町村から出ている
認可外保育施設
- 設置者が自由に設置できる
- 施設に直接申し込み、契約することができる
- 選考方法は、認可外保育施設でそれぞれ異なる
- 保育料は、設置者が自由に設定できるため、施設によって異なる
- 運営費等は、原則として保護者からの保育料のみ
※一部の補助対象施設(東京都認証保育所、企業主導型保育事業等)は運営費等の補助を受けている。
このような違いがありますが、認可外保育施設は、都や区市町村と関係なく運営しているわけではありません。認可外保育施設の設置者は、設置や変更などの届出を行う必要があります。開設や運営に当たっては、児童の安全や適切な保育水準を確保するために、「認可外保育施設に対する指導監督要綱」に定める基準を満たす必要があるのです。そしてすべての施設が、都道府県が行う指導監督(報告徴収、立入調査など)の対象となっています。
幼児教育・保育の無償化については、認可保育所の場合は、3~5歳児クラスが無料、0~2歳児クラスは、住民税非課税世帯は無料です。一方、認可外保育施設の場合は、3~5歳児クラスは月額3.7万円まで無償、0~2歳児クラス(住民税非課税世帯が対象)は、月額4.2万円まで無償。ただし、市区町村へ申請し「保育の必要性の認定」を受ける必要があり、また、施設によっては対象とならない場合もあります。プリスクールも含めて、無償化の対象となっている施設は、自治体のサイトなどで公開されています。
認可外保育施設で増加している「企業主導型保育施設」
区分では認可外保育施設となりますが、ここ数年で企業主導型保育施設が急増し、企業主導型のプリスクールも増えています。
企業主導型保育事業は、平成28年度に内閣府が開始した企業向けの助成制度。制度の対象となるのは、従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供するために企業が設置する保育施設や、地域の企業が共同で設置・利用する保育施設です。企業主導型保育園の利用定員には、従業員枠(自社の従業員)と地域枠(地域の入園希望者)があります。定員に空きがあれば、従業員でなくても利用できるのです。
利用者側のメリットとしては、企業主導型保育施設は国からの助成を受けているため、保護者から徴収する保育料は基準によって上限が定められています。そのため、一般的な認可外保育施設と比較して、保育料が安いです。また、入園料もありません。企業主導型保育施設への入園手続きは、多くの場合、その施設に直接申し込むことになります。時間をかけて選考が行われる認可保育所と比べ、入園できるか否かの結果をスムーズに知ることが出来るのもメリットの1つです。企業主導型保育施設は、「多様な働き方に応じた保育の提供」を目的に作られています。日曜日や祝日に受入れを行っている施設もあるので、保護者の働くスタイルによっては貴重な選択肢の1つになるでしょう。
待機児童問題解消への期待もあり、企業主導型保育施設は、事業開始翌年の平成29年10月には1,511施設となり、令和3年3月には4,223施設まで増えました。しかし、量を増やすことに重点が置かれ過ぎたため、保育士不足の問題なども出ています。施設の新しさなどだけでなく、教育方針や保育士の数などもしっかりと確認することが大切です。
企業主導型保育施設は、下記のサイトで検索することができます。
・企業主導型保育事業ポータル
https://www.kigyounaihoiku.jp/report/nursery